「なんかこの匂いを嗅ぐと頭が痛くなるんだよな…」なんて経験、ありませんか? 実はそれ、気のせいじゃないかもしれません。匂いと頭痛には、意外と深い関係があるんです。
私たちの鼻の奥には、「嗅覚」を感じ取る神経があります。この嗅覚神経は、顔の感覚やまぶたの開閉などを司る『三叉神経』と脳内で連絡を取り合っています。そのため、強い匂いが嗅覚神経を過剰に刺激すると、その興奮が三叉神経にも伝わり、頭痛を引き起こすことがあるのです。特に片頭痛持ちの方は、匂いに敏感な『嗅覚過敏(オスモフォビア)』の状態になっていることも少なくありません。だから、特定の匂いが刺激となって、頭痛センサーをオンにしてしまうことがあるんです。
特に、香水や柔軟剤に含まれる化学物質、タバコの煙、ペンキや接着剤のシンナー臭、湿気の多い場所のカビ臭さなどは、頭痛を引き起こしやすい代表的な匂いと言われています。人によっては、ほんの少しの匂いでも敏感に反応してしまい、ズキズキとした痛みを感じてしまうことも。
「匂い」が脳の特定のスイッチを押してしまう、そんなイメージを持つと分かりやすいかもしれませんね。決して「気の持ちよう」とか「我慢が足りない」ということではないので、もし特定の匂いで体調が悪くなるなら、それは体が発しているサインなのかもしれません。
頭痛を引き起こしやすい意外な匂い
香水やタバコ以外にも、「え、こんな匂いも?」と驚くようなものが頭痛の原因になることがあります。あなたの周りにも、もしかしたら潜んでいるかもしれません。
例えば、良かれと思って使っている芳香剤や消臭スプレーの強い香り。空気をきれいにしているつもりが、かえって頭痛の引き金になっている可能性も。特に、狭い空間で強い香りが充満すると、敏感な人は影響を受けやすいです。
また、料理中の匂いも要注意。玉ねぎやニンニクを炒める匂い、魚を焼く匂いなどが、人によっては頭痛を誘発することがあります。美味しい匂いのはずなのに、なんだか皮肉な話ですよね。
意外なところでは、「新車の匂い」。新しい車独特のあの匂いが好きという人もいますが、実は接着剤や内装材から揮発する化学物質の匂いが含まれていて、頭痛の原因になることがあります。
他にも、古本のカビ臭さ、塩素系漂白剤のツンとした匂い、意外なところではチーズやチョコレートの濃厚な香りなども、人によっては頭痛のきっかけになることがあります。また、季節によっては草いきれや土の匂いがダメという方もいるようです。「自分はこの匂いが苦手かも」と感じたら、それが頭痛のサインかもしれません。
匂いによる頭痛?それとも別の原因?見分け方のヒント
頭痛が起きたとき、「これってさっきの匂いのせいかな? それともただの疲れ?」と迷うこと、ありますよね。匂いが原因の頭痛なのか、それとも別の要因なのか、見分けるためのヒントをいくつかご紹介します。
まず、頭痛が起こるタイミングに注目してみましょう。特定の匂いを嗅いだ後、比較的すぐに(数分~1時間以内くらい)頭痛が始まる場合は、匂いが原因である可能性が高いです。
次に、頭痛が起こる場所もヒントになります。特定の部屋やお店、乗り物など、決まった場所に行くと頭痛が起こる場合、その場所に存在する何らかの匂いが原因かもしれません。例えば、「あのデパートの化粧品売り場に行くといつも頭が痛くなる」といったケースです。
頭痛以外の症状もチェックポイントです。匂いが引き金となる頭痛、特に片頭痛の場合、吐き気や嘔吐、光や音に対する過敏さを伴うことがあります。もし頭痛と一緒にこれらの症状が現れるなら、匂いが引き金になっている可能性を考えてみても良いでしょう。
頭痛日記をつけてみるのも有効な方法です。いつ、どこで、どんな状況で頭痛が起きたか、そしてその時周りにどんな匂いがあったかを記録しておくと、自分の頭痛のパターンや原因となる匂いが見えてくることがあります。「そういえば、この匂いを嗅いだ後に痛くなることが多いな」という発見があるかもしれません。
匂いによる頭痛を和らげる・予防する方法
匂いが原因で起こる頭痛は、本当につらいですよね。ここでは、そんな頭痛を少しでも和らげたり、事前に防いだりするための方法をいくつかご紹介します。
一番の予防策は、原因となる匂いを避けることです。自分がどんな匂いで頭痛を起こしやすいか分かっている場合は、できるだけその匂いに近づかないようにしましょう。自宅では、香りの強い柔軟剤や芳香剤の使用を見直してみましょう。窓を二方向開けて空気の通り道を作るなど、効果的な換気方法を試すのも良いですね。職場など自分でコントロールしにくい環境では、デスク用の小型空気清浄機を検討するのも一つの手です。外出時には、苦手な匂いがする場所を避ける、混雑する時間帯を避けるといった工夫も有効です。
外出先などで避けられない匂いに遭遇してしまった場合は、一時的にその場を離れて新鮮な空気を吸うだけでも、症状が和らぐことがあります。マスクをするのも、ある程度の匂いを遮断するのに役立つかもしれません。
もし頭痛が始まってしまったら、まずは安静にすることが大切です。可能であれば、暗くて静かな部屋で休みましょう。冷たいタオルや冷却シートで額やこめかみを冷やすと、痛みが和らぐことがあります。
また、香りのない製品を選ぶというのも、日常生活でできる予防策の一つです。洗剤やシャンプー、ボディソープといった日用品から、化粧水やファンデーションなどの化粧品、さらには整髪料に至るまで、様々なカテゴリーで無香料タイプが販売されています。普段使っているアイテムを無香料に変えるだけで、思わぬ頭痛の引き金を減らせるかもしれません。一度、身の回りの製品を見直してみてはいかがでしょうか。最近は様々な無香料製品が出ているので、探してみるのも良いでしょう。
良い香りが逆に頭痛を癒すこともある?
ここまで、匂いが頭痛を引き起こすという話をしてきましたが、実は「良い香り」が逆に頭痛を和らげるのに役立つ可能性もあるんです。ただし、これは少し注意が必要なポイントです。
一般的に「アロマテラピー」として知られるように、特定の植物の香りは心身をリラックスさせる効果が期待されています。ストレスや緊張が原因で起こる頭痛(緊張型頭痛など)の場合、リラックス効果のある穏やかな香りが、間接的に頭痛の緩和につながることがあります。
例えば、ラベンダーの香りには鎮静作用やリラックス効果があると言われています。また、ペパーミントの香りは、すっきりとした清涼感があり、頭痛や吐き気を和らげる効果が期待されることも。カモミールの香りも、心を落ち着かせるのに役立つと言われています。
ただし、ここで大切なのは「穏やかな香り」を選ぶこと、そして「自分が心地よいと感じる香り」を選ぶことです。頭痛を引き起こすほど強い香りは逆効果ですし、いくら一般的に良いとされる香りでも、自分が不快に感じるのであれば使うべきではありません。
もし試してみる場合は、ごく少量から、そして換気の良い場所で試すようにしましょう。アロマディフューザーを使ったり、ハンカチに精油を1滴だけ垂らして香りを嗅いだりする方法があります。あくまでも補助的な方法として、自分に合うかどうかを慎重に見極めることが大切です。強い匂いが苦手な方は、無理に試す必要はありません。
まとめ
いかがでしたか? 今回は、「匂い」と「頭痛」のちょっと意外な関係について掘り下げてみました。
特定の匂いが脳の痛みのセンサーを刺激して頭痛を引き起こすことがある、というのは驚きだったかもしれませんね。香水や化学物質だけでなく、普段「良い匂い」と思っているものや、意外な生活臭も原因になりうることがあります。
もし匂いが原因かも?と思ったら、頭痛が起こる状況を観察したり、日記をつけたりして、自分のトリガーを探ってみましょう。原因が分かれば、その匂いを避けたり、無香料製品を選んだりといった対策が取れます。
そして、穏やかな香りの中には、リラックス効果を通じて頭痛を和らげる手助けをしてくれる可能性のあるものも。ただし、香りの感じ方には個人差が大きいので、試す場合は慎重に、自分に合った方法を見つけることが大切です。
匂いは私たちの生活に彩りを与えてくれるものですが、時には悩みの種になることもあります。この記事が、皆さんの快適な毎日を送るためのヒントになれば嬉しいです。